≪園崎詩音と涼宮ハルヒ≫ ≪開演≫


≪園崎詩音と涼宮ハルヒ≫

「お姉に言われたとおり、誘っておきました。綿流しにはバッチリ来てくれるって!」
「ホント?ありがとう詩音!!!恩に着るよ〜〜〜!!」
「でも、その場に他の人が何人かいて、その人たちも行くことになっちゃいましたけど。
お姉を助けた時に一緒にいた人たちです。昨日言ってた涼宮ハルヒって子とか、その友達とか。
何かノリノリでしたよ、皆さん。私まで綿流し特別ナンタラに任命されちゃったし。
ってわけで、ま、大所帯で行きますけど。まずかったですか?」
「えっ、いいよいいよ!全然構わないって!詩音が一緒のほうが話しかけやすいし。
はー、でもよかったぁ〜……今までこういうこと一度も無かったからさ、何ていうか、
私おかしなことしてるんじゃないかって不安でさ〜」
「くすくす。全然おかしくないですって。別の意味で可笑しいですけど」
「ん、ん?なになに?どういうこと……? それにしても詩音、頼りになるねぇ」
「こういうのは任せてください。じゃ、あさっては頑張って!お姉の乙女モード、
期待してますから☆ くすくすくす」
「うん。頑張ってみるよ、ありがとう詩音。それじゃあね、おやすみ」
 今日、魅音に言われたとおり、前原圭一という男の子を探し出し、綿流しに誘った。
珍しくあんなことを言うお姉の頼みだ、きちんと果たさねば。
 いや、別に珍しいというわけでもないか。魅音だって年頃だ。

 魅音が助けられたとき、一緒にいたのが涼宮ハルヒなのは間違いなさそうだし、
とすればSOS団の部室に行けば会えるだろう。そう思い、友人に場所を聞いて、
放課後部室に行く。部室と言っても文芸部室だ。学校に認可されてない怪しい団体が、
文芸部の部室を普通に使っている時点で得体が知れる。
 ドアを開けた瞬間、そこに広がる空間が私の既成概念をブッ壊した。メイド服を着た可愛らしい
女の子が床に正座して、例の涼宮ハルヒがその子の髪をいじっている。横では男の子が2人、
楽しそうにオセロに興じている。部室の隅で、おかっぱ頭の女の子が分厚い本を読み耽る。
何の、部活なの!?
「えーと、すいませ〜ん……前原圭一くんは、いらっしゃいますかー……?」
 恐るおそる話しかけると、椅子に座らされ、私の質問は無視された。
「いらっしゃい!!ここに来るってことは普通の人には解決できない悩みがあるのね!?ほら、見てよ圭一!?
あたしの言った通りでしょ!!宣伝の効果があったのよっ!!! さ、何の依頼か聞こうじゃないの!」
 前原圭一に用があって来たはずなのに、何故か涼宮ハルヒに話を聞いてもらうことになった。
メイド服の子にお茶を出され、くつろいでくれと言わんばかりの空気を醸し出す。
「っていうかお前、昨日の興宮で絡まれてた子じゃないか?へぇ、うちの学校だったのか!!」
「あれ、言われてみればそうね」
「いえいえ、絡まれてたのは私の双子の姉なんです。で、その姉からちょっと頼みがあって来たんですよ」

 事情を話すと、前原圭一は快諾してくれた。というより、涼宮ハルヒが異常に乗り気になった。
「素敵なお祭りじゃない!!?ゼヒ行くわ!みんなあさっては空けておきなさい!!それと、
詩音さん……だったっけ?あなたをSOS団綿流し担当特別案内係に任命するから、一緒に行きましょうよ!」
「ええ!?? ……えっ、ええ、はぁ……。あー……し、詩音って呼び捨てでいいですよ……」
 有無を言わせぬ勢いに押し切られて、私まで一緒に行くことになった。
 その後、彼女らと雑談をした。いい話し相手が来たとばかりに、SOS団結成の理由やら過程やら、
メンバー紹介されたり、どんな活動をしてるとか、6〜7割涼宮ハルヒが喋っていたけど、まぁ、楽しかったよ。

 次の日校門を出るところで、涼宮ハルヒに会った。
「あれ、今日はやんないの?SOS団。パトロールか何かしてるんじゃなかったっけ?」
「聞いてよ詩音、なんか古泉くんと有希が、みくるちゃんもかな、用事あるんだって。一応あそこは
文芸部の部室だし、有希がいないとやっぱちょっとね。詩音は今帰るとこ?」
「んー、私はちょっと図書館に行こうかと」
「そうなの?あたしも一緒に行っていいかしら!?このまま帰ってもつまんないし」
 昨日の今日でマンツーマンか。参ったな。
「いいですよ。図書館が面白いかどうかは分かんないけど」

 図書館で借りていた本を返却した後、私たちは休憩コーナーでお喋りした。この涼宮ハルヒって子は
退屈な日常が嫌で変わったイベントに飢えている。そんな感じだ。その気持ちは分からなくもない。
「私ね、以前は小中高大一環の全寮制私立学園に通ってたんですよ。しかも女子校でね。私に言わせりゃ
あれは学校じゃなくて施設だけどね。そんなとこに幽閉されて、聖書読まされて先生をシスターと呼ばされて、
周りの生徒たちが素直に洗脳されていくなか、私はどうしても馴染めずに問題児扱いされてました」
「へぇー、最低な学校ね。信じらんない、あたしだったら3日で窒息死だわ」
「かもねぇ。くすくす」
「でも何で北高に通ってるわけ?その学校はやめたの?」
「脱走したんです。家の事情とか、やめたいなんて言ってやめさせてもらえる雰囲気では無かったので。
生徒たちは各界要人のご令嬢ばかりで、施設は完璧なまでの厳重警備、敷地中に張り巡らされた
監視カメラなんかの防犯システム、常時配備されてる警備員たち……それは同時に脱走を困難なものに
してくれまして。そんな監視の網をかいくぐって脱走した時は面白かったですよー!?
綿密な計画のもと、合鍵盗んでルートを確認して……実行するときのスリルは失神寸前でしたね!
それでまぁ、北高に編入して通うことになったんです」
「カッコイイじゃない!映画みたいね!羨ましいわ……あたしもそういう体験したいのに」

 そんな話をしているところに、一人の女性がやってきた。
「あら、詩音ちゃんじゃない。すいぶん久しぶりね」
「……あぁ、ご無沙汰してます、鷹野さん」
「なんだか他人行儀みたいな感じがするわ。昔みたいに三四でいいのに」
 鷹野三四さんという人だ。上品な胡散臭さ、この人を一言で表すとこうだろう。
雛見沢の病院でナースとして働くかたわら、毎年綿流しの日に起こる連続怪死事件、
通称"オヤシロさまの崇り"を調べることをライフワークとしている。
「お友達もご一緒なの?初めまして、私は鷹野三四。三四って呼んでくれていいわ」
「涼宮ハルヒです。はじめまして」
「明日の綿流しに、彼女とそのお友達と一緒に行くことになってるんですよ」
「そうなの?そういえば明日は綿流しね……今年は、誰が死んで誰が消えるのかしら?くすくす」
 いかにも涼宮ハルヒを刺激しそうな話題をさらりと切り出す。見ると涼宮ハルヒの目が輝き始めている。
「なんですか、それ?どういうことなの?」
「ここから少し離れた雛見沢村ではね、毎年綿流しの日になると一人が殺され、一人が行方不明になるの。
去年まで、もう4年も連続でその事件が起きてるのよ?個々の事件はそれなりに解決していて、関連性については
否定されている。でも、毎年同じ日に、同じ形で起きるんだもの、これを偶然と片付けるには疑問が残るわ。
それで、村では歴史的な信仰になぞらえて『オヤシロさまの崇り』、そう呼んでるの。もし本当に関連性ゼロなら、
本物の崇りなのかもしれない。そう見せかけて、実は誰かが毎年強い意志をもって起こしているのかもしれない。
私はね、その事件について色々と調べるのが趣味なの」
「そんな事件があるの!?詩音? もー、何で昨日教えてくれなかったのよ!? すごい、すごいわ!
……これはSOS団で調べないわけにはいかないわね!!! それで、明日も事件が!?」
「SOS団??? ……明日事件が起きるかどうかは、明日になってみないと分からないわね。くすくす。
でも私は、きっと何かが起こる気がするわ。興味があるならもう少し詳しくお話しましょうかしら?」
 涼宮ハルヒの反応が嬉しいのだろう、鷹野さんは怪しく微笑みながらバッグの中のスクラップ帳を取り出した。


≪開演≫

 今日もまた、キョンくんを宝探しに誘おうと思っていたけど、用事があるみたいで、
むこうからキャンセルされてしまった。昨日ケンタくん人形を取ってもらったりしてるし、
無理は言えない。残念だけど仕方ない。諦めて家に帰ると、すぐに後悔した。
うっかりしてた。帰るんじゃなかった。今日もあの女が来てるのに!

 最近ウチに入り浸るリナさんと出会ってから、父の金銭感覚は狂いはじめた。
母に裏切られる形で離婚して、かつて住んでいた雛見沢に私と一緒に引っ越してきた父は、
心が隙だらけだったのだろう。間宮リナという興宮で水商売をしている女に入れ込んで、
貢ぐようになった。気持ちがエスカレートするのに比例して、貢ぐ金額も増加の一途を辿る。
飲食代から始まって、やがて高額なプレゼントを繰り返し、あげく賃貸マンションの
敷金礼金まで……。最近では、離婚の際に母からもらった多額の慰謝料にも手をつけている。
間宮リナは、愛する母に裏切られて傷ついた父をたぶらかして、食い潰すつもりなんだ。

 そのリナさんが家に来ていた。私の家は、少し前に家具を一新して模様替えをした。
父は心機一転するためと言っていたが、どう見てもリナさんのセンスで包まれた部屋は、
私の居場所を奪った。そんな気にさせる。
 リナさんが愛想笑いで何か話しかけてくる。私の名前を呼ばれるだけでも虫唾が走る。
その香水の匂いが大嫌い。そんな本心を悟られないように、適当にあしらって家を飛び出し、
ゴミ山に向かう。
 かつてダム建設現場だった場所。かつてバラバラ殺人が起きた場所。
今は、まるで村の暗部を覆い隠すかのように、粗大ゴミの山で埋め尽くされている。
誰も近寄らない、忘れ去られた場所。
 ここは私の国。その一角にあるワゴンの廃車、内部を改装して作った私の城。
マットレスにシーツ、懐中電灯とか日用品。お菓子に本。まさに秘密の隠れ家。
周りには、誰にも必要とされなくなり捨てられたガラクタ。居場所の無い者たちに囲まれて、
ゆえに、私はここに居ていいんだと思わせてくれる。そんな私の国で、ガラクタたちと
やさしい時間を過ごそう。
 そう思ってゴミ山に来たのに、こともあろうにリナさんが追っかけてきた。
バイクの音が近付いてくる。自分の領土を侵されるような気分。やめて来ないで。
「おーい、礼奈ちゃーん!!」
不快感でいっぱいになった私の後ろで、排気音が止まる。

 何しに来たのか、世間話を始める彼女を避けたくなってゴミ山の斜面を降りていく。
当たり前のように話しながらついて来た。何なんだ。避けられてると気付いて欲しい。
 リナさんが父とマトモに付き合っているなら、今後のことを考えて私との仲を
良好にしておきたいがための行動と思えるかもしれない。現に父はリナさんとの再婚を
考えているが、私に遠慮してはっきりとは口にしない。リナさんもその気なら、
私との関係には気を使うだろう。
 けど私は知っている。この女はいわゆる美人局というのを企んでいる。興宮の喫茶店で
偶然見かけた時、鉄という男とそれらしき話をしていたのを耳にした。
貢がせているうちに気付いたんだろう、父が持つ財産の膨大さに。

 へえー、なんか秘密の隠れ家みたいで素敵ねー、なんて白々しく言ってくる。
「あはは。そうなんですよ、ここには誰も来ないし、誰にも何も聞コエマセン」
返事をする自分の声に不思議な違和感がある。
 私は、この場所が誰も知ラナイ秘密ノ場所デアルコトヲ思イ出シ、
意識ト体ガ剥離シテイクヨウナ、ふわふわトシタ感覚ニ酔ッテイタ。

 リナが少し真面目そうに切り出す。
「それでね、ずっとあなたのお父さんと付き合ってきて、色々話し合ったんだけど、」
「再婚は許さないです」
 しばらく沈黙したあと、リナが自嘲的な笑いでそれを破る。
「あっはははははは。……うーん、拒絶もあるかと思っていたけど、
ここまではっきり言われるとはね。何で?私のこと嫌い?どこが嫌いなの?」
「全部です。その香水も嫌いです」
「ふぅん。そっかー。ま、私もあんたが嫌いだからお互い様だしね。
でもね、私妊娠してるの。クリスチャンだから中絶もできないし。だからね──」
「  嘘だッ!!!!!
私は知ってる!鉄って男と喫茶店で話していた!!美人局をしようと企んでる!!!」
「……あら、知ってたの?そう。なら話が早いわね。いい子にしてりゃ、
小遣いでもやろうと思っていたのに。残念だわ」
 そう言いながら、リナの腕がスローモーションで伸びてくる。
「ウン千万って金が転がってくんだよ!こんなウマいカモは二度とねぇからよ!
てめー締めてウン千万なら悪かねぇさ、どうせ金巻き上げたら蒸発するつもりだ!
上等くれたらぁボケガキがぁ!死に晒せや!」
 首を引き千切るかのような強い力で締め付けられるまで、リナのこんなにも直接的な悪意に
気付けなかったのか、私は。すぐに頭が痺れるような感じがしてきて、首を絞めるリナの手を掴む。
「…………ぅ…………ンぐ…………っ……」
 そのまま、もつれながら後ろに倒れた。リナは尚も首を絞めたまま、力を緩めない。
倒れた拍子に地面についた手にガラスの感触があった。破片が落ちていたのだろう。
割と大きい。私はそれを手にすると、力いっぱいリナの手首を引っかく。
「ぎゃあああぁぁぁああぁ!痛ってぇぇぇえええぇぇ」
 私の首から手が離れる。傷口から血があふれ、リナは焦っている。今しかない。ガラクタの中に
1メートルぐらいの鉛管を見つけて拾う。大きく振りかぶって、リナ目掛けて力いっぱい振り下ろす。
「……っ!!」
 腕で防ごうとしたって、その腕が砕けるだけなのに。リナは両腕で頭を庇う。
グシャっと、肉の奥で骨が粉々になる感触があった。
「ぅわあああああぁぁっ!!!!ちょっと……! ちょっと待ってよ!!
マジ、洒落になんないって!!!」
 こんなこと洒落でやるものか。死ね死ね死ね、死んでしまえ……!
逃げ出そうとするリナを間髪置かずに何度も鉛管で殴りつける。逃げられるものか。ここは私の国。
頭を、肩を、背中を、そしてまた頭を──殴る度に骨が割れる感触が伝わり、
リナの呻き声が少しずつ細くなっていく。バランスを崩したのか、リナが足下を滑らせて
ゴミ山の斜面を人形のように転がり落ちていき、そのまま動かなくなった。
 リナに近付くと、目が開いたまま、首が不自然に曲がっている。
死んだフリかもしれないと思い、顔に砂をかけたりしたが、全く反応せず、
目蓋を閉じようとしない。リナの死を確信した瞬間、汗で鉛管が手から滑り落ちる。
こんなにも重いものを振り回していたのか。

 感傷に浸るヒマは無い……死体をどうしようか。たぶんコイツは普段からいい加減な生活をしている。
行方が分からなくても周りは特に不思議がらないだろう。変にアリバイ工作などしない方がいい。
問題は死体の処理だ。このゴミ山に隠すのが一番安全だろう。ここは忘れ去られた場所なのだから。
それでも百パーセント安心はできない。死体を細かく刻んで、この地上から抹消しなければ。
 とりあえず、近くに捨ててあった冷蔵庫に死体を入れて、家に帰ることにした。鉈を持ってこよう。
そう考えて、走って家に帰る。けど、鉈を持ってゴミ山に戻ってきた私は、信じられない光景を目にした。
死体を入れた冷蔵庫を開けると、

何てことだ、死体ガ消エテイル……


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